GCP – EU のデジタル政府における AI 革命: 「信奉」から「積極的な導入」へ
※この投稿は米国時間 2025 年 3 月 26 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
Implement Consulting Group が今回発表した新しいレポート「The AI opportunity for eGovernment in the EU」によると、生成 AI を導入することで、生産性の向上を通じて EU の行政機関に 1,000 億ユーロの機会がもたらされ、EU の市民と企業が大きなメリットを得られる可能性があります。
AI は、単なる技術進歩として導入を検討するものではなく、EU 全域の電子政府の進化に「不可欠」な要素であり、生産性の向上がその鍵となります。
太字で示したこの一文は、転換期の到来を告げるものです。理論面での議論を超えて、ヨーロッパの政府が今後どのように市民との交流を図り、生活に不可欠なサービスを提供していくかを決定するうえで、AI が果たす必要のある重要な役割を示しています。Google の委託を受けて作成されたこのレポートは、EU とその加盟国にとって重要な、ある機会を浮き彫りにしています。それは、AI の可能性を「信奉する組織」から、デジタル インフラストラクチャ内にこの画期的なテクノロジーを「迅速に導入する組織」への進化です。
「信奉」から「迅速な導入」への切り替えには、大きな意味があります。長年にわたり、公共部門における効率の向上、サービスのパーソナライズ、イノベーションの推進に関して、AI が秘める可能性が認識されてきました。
生成 AI は、EU 加盟国の行政機関の生産性を 10% 向上させる可能性があります。これは、同じリソースで年間 1,000 億ユーロ分の価値を上乗せできることを意味します。この潜在的な価値の 60% は行政手続きの効率化に由来するもので、空いたリソースを健康や福祉などの重要な分野に割り当てることができます。残りの 40% は、サービスの質とスピードの改善によるもので、これにより行政サービスの利便性が向上します。その要因は、AI により膨大なデータを分析し、市民のニーズをより深く理解することで、政府がよりパーソナライズされたサービス、さらには将来を見据えたサービスを提供できるようになることにあります。市民のライフイベントに応じて、特定の書類や給付の必要性を予測するシステムを想像してみてください。
ルーティン タスクの自動化や文書処理の改善といった低リスクの用途は、生成 AI の潜在的な価値の 15~20% を占めており、最優先に対応すべきものです。これらのユースケースを通して、政府はガバナンス フレームワークを強化しながら、制御された低リスクの環境で AI を活用できます。
生成 AI で EU 機関の生産性を 12% 向上できる可能性生成 AI は、立法、行政、司法、財務の複雑な業務を担当する職員を支援することで、EU 機関内の生産性を 12% 向上させる可能性があります。生成 AI を導入すると、EU 機関に勤務する 60,000 人の従業員の意思決定を強化し、効率を高め、リソースをより適切に配分できるようになります。
管理プロセスに生成 AI を統合することで、承認のボトルネックを減らし、コンプライアンスの手順を加速させ、より明確でアクセスしやすい規制の枠組みを実現できます。
チャットボットや翻訳サービスなどの AI を活用したツールには、多様なニーズや言語的背景を持つ市民が政府サービスを利用しやすくなるという利点もあります。
AI の広範な導入公共部門向けの AI インフラストラクチャには、効率的なスケーラビリティ、新たなテクノロジーやマルチクラウド運用への適応性、データ プライバシーとサイバーセキュリティを備えた堅牢なセキュリティ、共同作業のための相互運用性が必要です。最先端の AI のためにオンプレミスのスーパーコンピュータを導入すると、高額な費用がかかるだけでなく、非効率的でもあります。このため、行政機関に AI を広範に導入する際は、安全かつ堅牢なクラウド インフラストラクチャを利用します。この場合、専門のサプライヤーに依頼することが、最も費用対効果が高くスケーラブルなソリューションとなります。
EU がリーダーシップを発揮する機会このレポートでは、EU 政府が AI を活用したデジタル政府革命を主導する大きな機会があることを強調しています。AI の導入に関して積極的かつ戦略的なアプローチを採用することで、EU は公共部門における AI のグローバルな倫理基準と規制基準を定めることができます。また、イノベーションの促進、人材の発掘、利用しやすくレスポンシブなサービスを通じた市民のエンゲージメントの強化も実現できます。さらに、AI を活用して公共部門の効率を改善し、新たな経済成長の機会を創出することで、経済競争力を高めることもできます。
政府は AI の導入を促進するため今すぐ行動を起こすべきAI 導入の環境を整えるうえで、政府は重要な役割を果たします。AI の可能性を最大限に引き出すには、行政機関が、必要なインフラストラクチャの構築、データ品質の確保、AI 関連スキルの育成、規制の明確化に注力する必要があります。
クラウド インフラストラクチャや、法令を遵守した部門横断的なデータ共有手法などに関して不確実な点があり、AI の導入が遅れると、EU にもたらされる可能性全体が大幅に損なわれるおそれがあります。さらに、スキル不足や研究開発の不十分さなどの障壁も、導入を遅らせる要因となり得ます。生成 AI の導入開始が 5 年遅れると、達成できる可能性がある GDP が 3,000 億~4000 億ユーロ減少すると考えられています。
行政機関に特化した、安全かつスケーラブルな AI インフラストラクチャが、効果的な導入の鍵となります。質の高いデータ ガバナンスによって AI による改善が可能になる一方、ルールの簡素化と調和のとれた GDPR の導入によって責任ある AI の導入が促進されるでしょう。同様に重要なポイントは、公務員が日常業務で AI を効果的に活用するための知識と専門知識を身につけることです。
AI はもはや、遠い将来に導入を目指すものではなく、欧州連合の電子政府の未来を支える中心的な柱となっています。積極的な AI 導入はすでに始まっており、EU によるこの重要な変革への取り組みは世界中から注目を集めています。
-Google Cloud、EMEA 公共部門担当ディレクター Niall McDonagh
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